「さくら」 茨木のり子 1992年作(ということは66歳のころの作品かな)
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
据えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を
ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
据えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を
ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と
茨木さんの詩が 身に染みるような桜吹雪の中を歩いた
夜中に止んだ雨のあと 散った桜の美しさ
「さくらのはなびら」 まど みちお
さくらの つぼみが ふくらんできた と おもっているうちに もう まんかいに なっている きれいだなあ きれいだなあ と おもっているうちに もう ちりつくしてしまう まいねんの ことだけれど また おもう いちどでも いい ほめてあげられたらなあ…と さくらの ことばで さくらに そのまんかいを…